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ワルファリンは絶滅危惧種?いや永遠に不滅です:ワルファリンの私の使い方


 

最近はどこに行ってもNOAC,DOACですね。
でもときどきワルファリン一筋の医師に出会うことがあります。
以前循環器専門医で,現在主に循環器疾患を見ている開業医の先生が多いような印象を受けます。

そうした人に共通の特徴は,ワルファリン管理に絶対の自信を持っていることです。
そうした医師は,長年培った経験から,このくらいワルファリンを増減すれば,次はこのひとならPT-INRがこのくらいに行くというのを,からだの中で言語化せずに,暗黙知として熟成して実践できるのだと思います。

私もご多分にもれず,そうした職人芸を弄する者の一人と思っています。以前拙著「プライマリ・ケア医のための心房細動入門」にも書きましたが,
方針はだいたい以下のとおりです。

1)70歳未満でも1.6〜2.6を目指す
2)だいたい70歳未満は2.2〜2.4くらい。70歳以上は2.0を目指す
3)高齢者,腎機能低下者,何回か使ってみてINRの上下の大きい人は0.25mg単位で増減する
4)INRが2.5以上になったら0.25〜0.5mg減らす
5)INRが1.6以下になったら0.25〜0.5mg増やす
6)INRが3以上になったら半分に減らして3日後に来てもらう
7)INRが4以上になったら全量中止して2日後来てもらう


もちろん高齢者,腎機能低下者はより細かく次回訪問日や変更用量を設定することもあります。
こうしてみると,INR調節は決して職人芸ではなく,かなりアルゴリズムに近いんですね。近い将来AIが医療を席巻し,そのときAIはNOACを使うでしょう。でもワルファリンの職人芸にもAIがすぐ立ち入りそうな予感もするのです。

で,これで5ヶ月やってみて,(導入期を除き)2回以上ワルファリン錠数の変更を余儀なくされる場合はNOACを考える。こんな感じです。
このやり方でTTRは75%(70歳未満も1.6〜2.6でよしとして)くらいまで可能です。
TTR75%ならどんなNOACにも太刀打ちできるかと思います。
実際,この5年間,INRが変動する例のみNOACに変え,管理良好例はワルファリンのままにしてやっていますが,頭蓋内出血,心原性脳塞栓症とも極小です。
全くの自前データなのでエビデンスレベルは最低ではありますが。

まあこんなことを書くと専門医の先生からはおしかりを受けそうです。たんなるExperiece based medicineではないかと。
でもですね,だいたいNOACのRCTはみんなINR2.0-3.0を目指す欧米の集団ですから,その意味でも日本人には鵜呑みにできないと思われます。
また,NOACのRCTの脱落率は20〜35%もあるわけです。
さらにのPIONEER-AFなどでは,NOACの超低用量に対しワルファリンは健気にもINR2〜3で戦っています。不公平と言うかほんと不憫なワルファリンです。涙が出ます(笑)。

たしかにNOACの導入,維持の簡便さはかなりメリットであり魅力ではあります。特に忙しいときなど。
またたしかに頭蓋内出血はどのRCTやどのリアルワールドデータを見てもワルファリンは勝てそうにないように思います。

でもね。繰り返すようですが,腎機能超低下例や人工弁,僧帽弁狭窄症症例はもちろん,そしてそれ以外の一般のケースでもまだまだ使いようによってはワルファリンもいけますということを声を大にして言いたいと思います。コスパは超絶大ですしね。

ワルファリンは絶滅危惧種?,いや永遠に不滅です,と言いたい。 by Dobashi

 

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